夏色のキミ〜sea side


「はっくしょんっ!」



リビングから
豪快なくしゃみが聞こえた。


それを聞いて一瞬体が固まったが 私は慌ててリビングへ向かう。



「お父さんっ!」


乱暴に開けた扉から見えたのは
ソファーに座って新聞を広げながら、コーヒーをすするお父さんの姿。


お父さんはびっくりした様子で私を見つめた


「どうしたんだ 亜紀」


「と、敏美さんは?」


お父さんの前では
あの人 なんて言えない。



「用があって出掛けたよ」


新聞を閉じ、にっこり微笑むお父さん



……あの人が、居ない。


やっとお父さんと二人きりになれた


ニ年前
あの人が来てから初めての事だった。

いつもいつもお父さんの隣にべっとりくっつく女


お父さんを見ると、嫌でもあの人まで視界に入ってくる。

それほど、あの人はお父さんといつも一緒だった。


その人が、今居ない


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