夏色のキミ〜sea side
「亜紀?」
驚いたまま動かない私を不思議に思ったのか どうした、と聞くお父さん。
…言うなら きっと今しかない。
あの人に嫌味を言われている事や いつも一人でご飯を食べている事
全て
言ってしまいたい。
だけど
あの人との不仲を口にすると、お父さんはきっと傷付くだろう
そんな顔を見たくなくて
私はずっと我慢してきた。
でも…
もう堪えられない。
あの人を見ると、声を聞くと 頭が痛くなる。
私は、もうとっくに限界だった
「……お父さん…」
「ん?どうした?」
優しく目を細めるお父さんに 決心が鈍る。
思わず目を逸らして、私は俯いたまま、全てを吐き出した。
「私…私ね、敏美さんにいつも嫌な事ばっかり言われてるの。本当は仲良くなんかないんだ」
頭で考えるより先に
口をついて出た言葉。
目を見開いて 私の顔を見るお父さん。
天気を知らせるテレビの音が 耳をつんざく
すごく、長い時間だったような気がする。
だけど、テレビからまだ天気予報が流れていたという事は
それ程時間は経っていないようだった。
「亜紀」
重苦しい空気の中、やっと口を開いたお父さんに
恐る恐る目を合わせた。
「敏美はそんな人じゃない。何かの思いすごしだよ。亜紀の気にし過ぎだ」
にっこりと微笑む
お父さん。