夏色のキミ〜sea side
どこ行くの?
と聞くに聞けず
無言のまま走る事30分
辺りは見慣れない町に変わっていた。
乗れ なんて言うから、学校に行くんだとばかり思ってたけど 違ったみたい。
…良かった
とても学校へ行ける気分じゃないし
知らない所へ来て、何だかほっとした。
それにしても
青島純は何を考えて私を乗せたんだろう
制服を着てるんだから
登校する途中だったんだろうけど…
頭に疑問符を浮かべながら私は彼の背中を見つめていた。
「着いた〜っ はあ、あっつー」
あれからまた30分くらい経っただろうか。
停まった場所からは、青い海が見えた。
並木と民家ばかりが並んだ国道沿いに、急に現れた海
私はびっくりして、うわぁ と声を上げた。
「いいだろ」
自慢気にそう言う彼の額には、汗が滲んでいた。
私を乗せて1時間も自転車をこぎっぱなしだったんだ
そう思うと、急に申し訳なくなった。
「行くぞ」
そんな気持ちを振り払うように明るく促されて
私は何も言えないまま、荷台から降りる
彼はスタンドを立ててから 着ていた学ランを脱いで、カゴへ入れた
相当暑いのだろう
「あ、けつ痛かったよな。大丈夫?」
私を振り返るなり 指摘され、どきりとした。
ずっと自転車をこいでいた自分の方が辛かっただろうに
私を気に掛けてくれた優しさが、単純に嬉しくて でも申し訳なくて…
「全然大丈夫っ」
痺れたお尻を無視して 私は首を振った。