夏色のキミ〜sea side


「さっき公園でいちごオレって呼んだら、普通に反応したじゃん」


「あれは…っちょっとびっくりしたのッ」


そんな事に反応出来る状況じゃなかっただけだしっ


自分の中で そう納得させる。


いや、実際そうだったんだから 仕方がない



「名前は?」


笑い終えた青島純に聞かれ、
「山瀬」

と答えたが


「じゃなくて」

と返された。


返答を待つ彼を見て
やっと下の名前を聞かれていた事に気付く。



「…亜紀」


何だか改めて名乗るのは ちょっと気恥ずかしい。

下の名前だから余計に、だ。


小さな声だったが 彼は聞き取ってくれたらしい


「亜紀か。いちごオレより呼びやすくていいな」


に、と悪戯に笑う青島純



なんでだろう



たったそれだけだったのに


「…え」



勝手に涙が出てきた。


別に何を言われたわけでもないのに

とめどなく流れる涙


止めたいのに止まらず
私は膝を抱えて俯く。


やだ、恥ずかしい



青島純は 少し考えてから私の前へしゃがみ込んだ



「…俺…何か悪い事言った?」


申し訳なさそうな彼の声が頭上から聞こえ
私はかぶりを振る


「……何か溜めてんなら、話すだけでも違うぜ?」


ぽん、と私の頭を撫でる大きな温かい手。



お父さんの手と
同じだ…



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