夏色のキミ〜sea side
「おはよ」
そう言って顔を上げ
私は絶句した。
「な、なにそれっ!」
立ち上がって純の顔をまじまじと見つめる。
無数の傷痕と 痛そうな痣
腕には大きな擦り傷。
「あー…ちょっと喧嘩して」
苦笑いする純。
と 同時に喧嘩と聞いて あの噂を思い出した。
―喧嘩は当たり前で暴走族にも入ってた
純と居る内にそんな噂話、忘れていた。
だって彼にはそんな雰囲気なんて 微塵もなかったから
私は優しくてちょっと意地悪な純しか 知らない。
「どこの誰やねん」
低い声でそう言い、純を見上げる建斗
その表情はいつものふざけたものとは 驚くほど違っていた。
怒ってる 建斗の目がそう語っていた
「…多分、北高の制服だったな。建斗も気を付けろ」
“北高”の言葉に建斗は目を丸くした
「…何人おってん」
「6、7人ぐらい」
「…くそ」
眉間に皺を寄せ、純から床へと視線を落とす建斗
…北高?6、7人?
建斗も気を付けろ?
純の言葉を端々に思い起こすが 私には意味が分からない。
ただ、建斗がこれだけ深刻そうな顔をしているのは 初めてだった。
いつも明るい建斗が こんなに思い詰めた表情をしている。
ただ事ではないらしい