夏色のキミ〜sea side

「あっ純くん、おは―……って…なにそれ」


トイレから帰って来たさくら
明るく挨拶をしようとしたはずなのに、純の痛々しい傷を見て

最後の方は声が小さくなっていた。



「ちょっと喧嘩してさ」


何事もなかったかのように 笑顔を振りまく純


いつもはその笑顔が眩しくてドキドキするのに
今は傷痕が痛々しくて、見てられないよ…。


「純…保健室行ってちゃんと手当てしようよ」


「大丈夫大丈夫 ほっとけば治るって」


「だめ!消毒だけでもさせてっ」


必死だった。

純が危ない目に合ってるのに 私は何もしてあげられない。


そう思うと 悲しくて悔しくて、何故だか不安になる


私の知らない純は確かに居る。


建斗のあんな表情だって初めて見た


二人には私が知らない事が きっと色々あるんだ


だけど

純は純だもん


今こうして私の目の前に居るなら 手当てくらいさせて。



「…分かったよ」


観念したように 机へ鞄を降ろす純


私は ほっと胸を撫で下ろした。



「亜紀、頼むな」


力なく微笑む建斗に 胸が痛くなる。


こくりと頷いてから、純と教室を出ようと椅子から立ち上がった時



「保健室やからって、やらしい事したらあかんで」


口に手を添え いつものセクハラ発言。


「建斗ッ!」



怒る私に 無邪気に笑う建斗。



もしかして

気を遣ってくれたのか


ふとそう思ったが 本気で笑い飛ばす彼を見て

やっぱり気のせいだ と思い直した。



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