夏色のキミ〜sea side
「遅いよ亜紀っ」
後ろの扉からこっそり教室に入る私に、小声で叱る さくら。
彼女に薄ら笑いを返し
見つからないように床を這いながら、慎重に自分の席を目指す。
が…
「山瀬」
低い声で名前を呼ばれ びっくりして立ち上がる。
「気付かれないように入って来ても、遅刻は遅刻だ」
教卓から鋭い目で私を捉える先生。
私は思わず苦笑いを浮かべた
「ほら 早く席につけ」
そう促され、私は居心地悪く椅子に座った。
くそう、最初から堂々と入れば良かった
まだ入学して数日だってのに、恥ずかしいな
クラスメイトからの視線を振り切るように、私は鞄の中から教科書やノートを引っ張り出していたが
―ガラッ
勢い良く扉が開かれた音に、周りの視線はすぐ そちらに向いた。