夏色のキミ〜sea side

「亜紀」


名前を呼ばれ、びくりと肩が震えた。

その肩をそっと掴む、純の優しい手


「…何で言わねぇの」


落ち着いた、低い声だった。

怒っているのか呆れているのか分からない



「迷惑…だと思って…」


私は俯いたまま 続ける


「純達に、嫌がられたらって…思っ…―」


最後は声にならなかった。
震える声を 抑えようとするのに必死で 言葉が続かなかった。



「ばか、そんな事だれも思わねぇよ」


背中に片手を回され、そのまま抱き寄せられる。


まるで子供をあやすように背中をポンポン、とされた途端 涙が溢れてきた。


表面張力で保っていた水が 限界の瞬間に 溢れたように 次々と流れる涙。


ずっと張り詰めていた気持ちが、純の言葉一つでゆるゆると解かれる



「ごめんな 俺が原因だったのに」


純の言葉に、思い切り首を横に振る。

違う 私がずっと黙ってたから

私がそうしたかったから

純は何も悪くない。



「……泣くほど怖かった?」


優しく私の頭を撫でる 純の大きな手



違うよ、純。


怖くて泣いてるんじゃないの



純が優しくて温かいから

安心して涙が出たんだよ。


< 52 / 201 >

この作品をシェア

pagetop