夏色のキミ〜sea side
夏休み
「休みだからと羽目を外すような行動は慎み、夜遅くに繁華街や―」
お決まりな校長の長話に欠伸をする。
ただでさえ暑いのに この狭い体育館に全学年が集結する意味があるのか
館内の熱気がもうもうと籠もって余計暑いだけじゃないか
滴る汗を拭いながら 頼むから早く終わってくれ と思う。
だが、そんな不愉快な気分も 明日から夏休みだと思えば 吹っ飛んでしまう。
学校が休みで家に居るのは億劫だが、明日からは早起きしなくて済む
そう思うと 心が踊るほど嬉しかった。
だけど、一つだけ嫌な事がある
学校がなければ純と会えない。
携帯番号を知っているのだから、別に遊びに誘う事は出来る
けど 残念ながら私にそんな根性はない。
彼女でもなんでもない私が 遊びに誘っていいのだろうかと思う
―ちらりと彼を盗み見た。
一番前なのに、あぐらをかいて 堂々と居眠りをしている。
あの日以来
今田里穂達からの嫌がらせは ぱったりと止んだ。
まあ、それはそうだろう
好きな人に一喝されたのだ
彼女はかなりショックを受けたんだろう。
当の私はあの日の事を思い出すだけで、体がかぁっと熱くなる
純の体温 優しい手 静かな声
彼の胸で 泣きじゃくる私…。