夏色のキミ〜sea side
「妹に借りたんだ、それ」
自転車が走り出し 人の多い繁華街をするすると抜ける。
“妹”
純の口からそんなフレーズが出るとは思ってなかった。
親と仲が悪い、そう言っていた彼の顔を見てから
家族の話はしないだろうと思っていたから。
「妹居るんだっ純に似てる?何才?」
質問攻めの私
「俺には似てないな。いま、小三」
「そんなに小さいんだっ じゃあ、すごく可愛いでしょ」
「うーん…まぁ」
あやふやな返事をする純
だけどね、分かってるんだ
少しだけ見えた純の横顔が やんわりと微笑んでいた事を。
“お兄ちゃん”の顔をしていた事を。
きっと純なら すごく優しいお兄ちゃんなんだろうな
お兄ちゃんか…
私のお兄ちゃんは どこに居るんだろう。