夏色のキミ〜sea side
自転車を降りた時には、辺りは夜を迎えていた。
真っ暗に広がる海を見て 私はやっとどこへ来たのか気付く。
学校をさぼって 純が連れて来てくれた、あの海だ。
行き道や走っている時間で気付きそうなものだが、朝と夜じゃまるきり景色が違う。
前は人っ子一人いなかったのに、今日の海は何だか騒がしい。
コンクリートの波除けから、浜辺を見下ろしてみた。
祭りでもしているのか、砂浜にはちらほらと屋台が並び 浴衣を着た人もいる
「行くぞ〜」
自転車を停めた純の後をついて 階段を下り、屋台でジュースを買う
慌てて財布を出したのに
「いらねぇって」
とラムネを押し付けられた。
砂浜に腰を下ろしてから
ようやく私は ありがとう、と呟く
純は、んー と言ってから
「たぶん 間に合ったと思うんだけど」
と言った。
何が? そう、聞こうとした瞬間
―ドン…っ
一瞬、雷かと思った。
音のした方へ視線を彷徨わせると 真っ暗な海の上に打ち上がった大きな花火が見えた。
―ドン…、ドンッ
テンポ良く打ち上がる花火に 私はただ びっくりして何も言えなかった。