夏色のキミ〜sea side
「毎年ここで花火上がるの、知らねぇ?」
言った純に、ふと目を移す。
次から次へと打ち上がる花火を見つめたまま、照らされた横顔に
どきりとした。
もしかして
花火を見せる為に私を連れて来てくれたの?
そう、聞いてみたかった。
「全然知らなかったよ。花火が上がるなんて」
家から1時間ほどの場所なのに 何で知らなかったんだろう
そんな私の心を読み取るように 純が言った。
「まあ 上がる数少ないし、そんなにでかい祭りじゃねぇからな」
煙草を取り出し、火を点ける純。
吐き出された煙が 夜空の花火と重なった。
赤や青、緑に黄色
大きく打ち上がる花火は
真っ黒な夜空に 彩りの華を咲かせる。
そんな美しさに 私達はあまり言葉を交わさず
首が痛くなるまで 夜空を見上げていた。
と、ラストスパートの連発花火が始まった時だった。
ふいに背後から粘っこい声が聞こえた
「あれ、青島くんじゃん」
その声に振り向くと ガラの悪そうな男が3人
純を見下ろしていた。
「可愛い子連れて…彼女かなぁ?」
男は不気味な笑みを浮かべて 今度は私を見下ろした。
背筋がゾクッとする
金髪の長い前髪から覗く目には 何かしてやろう そんな思いが込められている気がしたからだ。
「…なんだよ」
疎ましそうに 男達を鋭く見上げる純。
「いやぁ、昔に俺の連れが世話になったらしくてさ」
じり、と金髪男が近付く。
それを見た純は 腕を掴んで私を立ち上がらせ 私の耳元に小さく囁いた
「チャリのとこ、戻ってて」
それだけ言って
純は私の背を押した。