夏色のキミ〜sea side


「え!?」


後を追って来た建斗が びっくりして私の背後に立ち止まる。


呼ばれた本人は 一瞬そのまま歩を進めようとしたが 踏みとどまって ゆっくりこちらを振り返った。



「…やっぱり、亜紀か」



申し訳なさそうな 遠慮がちな笑顔だった。






――――――





「……何で俺だって気付いたんだ?」


公園に植えられた木々がざわざわと騒めく

日暮れが近くなったこの頃、空には既にうっすらと月が現われていた。

長袖シャツだけじゃ少し肌寒い。


私達は話をする為に近くの公園へ入った

建斗には先に帰ってもらい、事情は後で説明すると言っておいた。


二人で腰かけた木製のベンチ

そこに並んだ

二つのいちごオレ。



あの時 お兄ちゃんが棚に返したジュースが いちごオレじゃなければ
兄だとすぐには気付けなかったかも知れない。


「お兄ちゃんのお陰で 私もいちごオレ大好きになったんだけど」


私のいちごオレ好きは
紛れもなく兄から受け継いだものだ。

お兄ちゃんは昔からいちごオレばかり買って来て よく私に飲ませていたから

いつの間にか私も大好きになった。


「…はは 亜紀には叶わないな」


お兄ちゃんは苦笑いしながら ふ、と地面に視線を落とした


「…何で出て行ったの?」


何年も疑問だった事を やっとぶつけられた。


私が小さい頃出て行ったお兄ちゃん

お母さんがいなくなって翌年の事だった。

お父さんと三人 皆で頑張ろうって言ってたのに

何で出て行ったの?


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