夏色のキミ〜sea side
「……」
黙り込むお兄ちゃんの返答を急かすように風が吹いて、乾いた地面を枯葉が転がっていく。
スカートの上で重ねた手にじっとりと汗が滲む。
どれだけ長い間そうしていただろう
時間にしては短かったかも知れないが 私にはその沈黙が物凄く長く感じられた。
「…負担になりたくなかったんだ」
兄は神妙な面持ちで切り出した。
「…負担?」
疑問系で返すと 兄は地面に視線を落としたまま、深く頷いた。
「あの時、親父の会社やばくてさ。とてもじゃないけど俺が受験した私立高校に入学する余裕なんてなかったんだ」
かさかさと音を立てながら風に吹かれる枯葉
それを目で追う 兄の悲しそうな顔
私は一瞬 何を言われたのか分からなかった。
家を出たのは受験のせいだけ?
もっと何か理由があるんじゃないの?
私は小さかったから何も覚えていないけど、中学校卒業と同時に家を出るなんて 相当な理由があったんだろうと 踏んでいた。
お父さんはお兄ちゃんの事なんて何も言ってくれなかったし
私はてっきりお父さんがお兄ちゃんを勘当したんだと思っていた。
兄はそれくらいの不良息子だったとお父さんに聞かされていたから