夏色のキミ〜sea side

「俺の事は心配ない。親父はどうなんだよ」


話を切り返され、お父さんは頭に疑問符を浮かべた


「どうって…」


「再婚してんだろ?」


急に指摘され、お父さんは少し驚いたが すぐに ああ と返事を返した。


「敏美さんだっけ?仲良くやってんの?」


「ああ…まあ」


息子にズバズバ質問され 何だか気恥ずかしそうな父

だけどそんな様子も、お兄ちゃんの一言ですぐに終わってしまう。


「亜紀がその敏美って人に色々言われてるみたいだけど、それ知ってんの?」


「え…」



空気が 張り詰めた。


せっかくお兄ちゃんが帰って来て あの人も居ない
家族水入らずの幸せな日なのに

和やかな空気は流れない。


「亜紀、ずっと一人で飯作って食べてるらしいじゃん」


「一人…?そんなはずないだろう、なあ亜紀」


心臓が鷲掴みされたかと思った。


いざ こうしてもう一度お父さんと向き合うなんて怖くて出来ない。

お父さんの顔が見れない



「亜紀?」


縋るように私を見つめるお父さん。


やっぱり、駄目


男手一つで育ててくれたお父さんを傷つけるなんて
出来ない。

ましてや一度
あの人との事を告白して失敗している

また信じてくれなかったら私はもう立ち直れない…


そうなんだけど、大丈夫だよ

そう言って誤魔化してしまおうか…



――“絶対分かってくれる”


ふと蘇る思い出


あの海で初めて名前を呼ばれた時に言われた言葉。



…純



私 がんばってみるよ


せっかくお兄ちゃんがくれたチャンス


今まで言えなかった事を
全部お父さんにぶつけてみるよ


信じてくれなくても

あの人の肩を持っても





私は前に進むんだ。


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