夏色のキミ〜sea side
“ずっと言わなかったが、あいつには他に男がいた”
コーヒーをすするお父さんの手が 少し震えていた。
“不倫なんて信じたくなかったんだ。あいつはそんな奴じゃないと思いたかった…だから亜紀の言葉も信じたくなかった。すまん…許してくれ”
申し訳なさそうに眉間に皺を寄せるお父さん。
一番傷ついているのは自分なのに…
実の父に頭を下げられ、私はどうすればいいのか分からなかった。
戸惑う私とお父さんの間に気まずい空気が流れる
“親父、女は若さじゃないぜ”
そんな場を和ませたのは お兄ちゃんだった。
あれから お兄ちゃんは毎日家に顔を出す
そして やっと揃った家族三人で遅い夜ご飯を食べる。
お兄ちゃんには一緒に住もうと言ったけど、今借りてる部屋の契約がまだまだ残っているらしい。
お父さんとは まだ少し気まずいままだが
それは時間が解決してくれるだろう。
それより何より お父さんの心の傷が早く癒えて欲しいと思う。
「亜紀のお兄ちゃん、早く見たいな」
「なかなか男前やったで。思い出してみたら ちょっと亜紀に似てるか」
建斗には全ての事情を話し、前々から知っているさくらには事のいきさつを話した。
もちろん 純にも
「純のおかげだよ ありがとう」
看板の釘打ちをする純にそう言って頭を下げると
「良かったな」
優しい手が 私の髪の毛をくしゃしゃと撫でた。