夏色のキミ〜sea side
体育館に着くと
舞台ではボーカルの男の子がマイクを片手に喋っていた。
軽い自己紹介に、これから歌う曲のタイトルを言い終えると
早速加島君がドラムを叩き始めた。
照明が彼らに絞られ
誰もが舞台に釘付けになる。
観客は体育館の半分以上入っていた
私は伸びやかで繊細なボーカルの声に 聞き入っていた。
恋愛の歌詞らしく
好きとか辛いという単語が歌われている
私は隣に居る純を こっそり盗み見た。
彼は手拍子をするでもなく、ただ舞台を見つめている
私も純が好きだけど
辛いなんて思った事はまだない。
だから 私はこの時
歌詞の意味がよく分からなかった。
“人を好きになるのは辛い”
そんな気持ちが分かるようになったのは
学園祭のすぐ後だった。