夏色のキミ〜sea side
「純の家、教えて」
放課後 私は帰り支度をしていた建斗の前に
ずん、と立ちはだかった。
彼はきょとんと私を見上げる
そして私から視線を逸らすと、遂にきたか と焦った顔をしていた。
「亜紀、顔めっちゃ怖い」
「いいから教えて」
早口に答えると 建斗は
思い込むように俯いた。
「…悪いけど、無理やわ」
「何で?」
「本人に口止めされてるから」
こんな事言いたくなかった と付け加えそうな 建斗の暗い表情。
いつもの明るい彼からは想像出来ないくらい その表情は沈んでいた。
「…純は…何かやばい事に巻き込まれてるの?」
私が ぽつりと洩らすと
建斗は私に視線を戻した。
「ちゃうよ。もっと辛い事」
そう言った建斗の瞳には 何にも感じ取れなかった。
だがそれは、彼がなんとも思ってないわけじゃない
その瞳には 私には到底想像出来ないくらい
複雑な色が映されていたのだ。
もっと辛い事?
私はてっきり 純は何か昔の縺れ
例によって喧嘩や過去の事で、やばい事に巻き込まれているんだと思っていた。
じゃないと二週間も休まないだろう
だけど私の考えは違った。
純は もっと辛い事で休んでいるという
一体なんだろう
心臓がぎゅっと鷲掴みされたように 痛かった。
言いようのない胸騒ぎが
不安を掻き立てる。