夏色のキミ〜sea side
「純はな、親と仲悪いねん」
建斗は前髪を留めていたピンを外しながら 静かに言った。
「家着けば分かるけど、純はボンボンで おとんが医者でおかんは看護師や。また おとんは何や偉いさんらしいわ」
前髪をくしゃくしゃしながら 建斗は淡々と続ける。
私はただ黙って頷いていた
「両親は世間の体裁ばっか気にする人で 純は小さい頃からだいぶ厳しく育てられてんて。友達も趣味も全部選ばれて、自分が選ぶ事なんか一つもないまま育ったって」
まるで自分の事を話しているかのように
建斗の表情は曇っていた。
よっぽど純が心配なんだろうな
二人の絆が
ふと見えた気がした。
「…純が休んでる理由は俺もほんまに何も知らんねん」
行き詰まったように建斗は頭を抱えた
「ただ一週間前…亜紀に聞かれても家は教えないでほしい ってメールだけ入ってきてん」
「え…?何で?」
「分からん。それきり連絡ないし…」
何で純がそんな事を言ったんだろう
私に知られちゃまずい事でもあるのだろうか?
「…話戻すけど 中学で純が荒れ始めてから、両親は純の事を見放したんや」
「…見放した…って?」
よく意味が分からない。
けど
この後建斗が言う言葉が想像出来てしまう
「縁を切ったんや」