優しい声



妊娠がわかってすぐに入院した私の体力、筋力は予想を超えて衰えていた。

胎児に影響しない薬だけを頼りに普段から機能しない体をなんとか機能させて、安静を保ちながらの妊娠期間。

約半年で、私の筋力では歩く事もままならず、ましてや桜を抱く力も残っていない情けない体になっていた…。

「じっくりリハビリしよう」

担当で、長年私の体を診てくれている友美先生の指示に従って、薬を飲み点滴を打ち。

泣く体力もなくなるくらいにつらいリハビリに励んだ…。

体中の関節が硬くなって、マッサージしてもらう度に襲う激痛にも歯を食いしばって頑張って。

まるで呪文のように

「桜を抱きしめたい…」

と心で繰り返した。

そんな私の様子を見る度につらそうな健吾に抱きしめられて…パワーを注入してもらいながら。

…そして。

そんなつらい時間を過ごす中で、桜は私よりも早くに退院した。

何度か抱きしめて、ミルクも飲ませて…。

健吾に似ているかわいい顔や、必死で私の指をつかんでくる仕草が愛しくて愛しくて。

生きてて良かった…。

そう感じるわずかな時間が、つらい入院生活の励みだったけれど。

私より早く退院した桜。
同じ病院にいない桜。

夜中寂しくて泣いて…。

健吾が泊まって、ずっと私を抱きしめながら

『愛してるよ』

と耳元で囁き続けてくれた…。

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