私を見なさい!!!




私は走らなかった。



いつもと変わらない同じ速度で、穏やかな気持ちで挑みたかった。





「誉ちゃん……」



視線の向こうには、確かに奴が居た。




こんな時でも、

仁美君は優しく微笑んでいる。




この笑顔も、もう見れないとなると何だか笑えた。


惨めな自分を笑った。



男に負けるなんて端から見れば惨め過ぎるわ。




あぁ、寒い。
夜はまだ冷えるのね。



終わるなら、早く終わらせよう。





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