私の小さな物語
息をいっぱい吸い込んで、なるべく端的に言った。
「アタシはまだ高梨のコト好きじゃないの」
「は?」
「まぁまぁ黙って聞いてよ。だからね、まだ完全にふっきれてはないんですよ。
でも、なんでこんなにあっさり柊君から離れられたんだろうって考えると、高梨がいたからっていう結論にたどりつくの。
だからアタシは高梨が必要なんじゃないかなぁって」
俯いていた顔を上げて高梨を見る。
すると高梨は予想外に赤面中だった。
「…つまり、俺にも可能性があるってこと?」
「簡単に言うとね。今は柊君よりも安心できる物件ですね」
「なんかその言い方ムカつくけど……」
雨の中駆けつけてくれたし。
こんなずぶ濡れで。