黒アゲハ Ⅰ -小さな宝物- 【完】


「でもやっぱ、おまえら見てると昔を思い出すよ」


店長は遠い日を見るように言った。


「今ではこんなに龍神も立派になってよー」

「えっ、店長さん龍神いたんですか?」


あたしは思わず聞いていた。


「うん、初代幹部だったんだよ」

「すっごー」

「思い出すなぁ……初代総長。
かなり変わったヤツだと思う、あいつは。
16歳にして女と不倫だよ?あん時はさすがにびっくりしたな〜。
しかも、その女に子供できたとか言いだすし」


いつのまにか、みんなが店長の話に聞き入り始めた。


「ほんとにおまえの子供なのか?みたいなね。後からDNA鑑定した結果、ほんとにそうだったらしいけど。
んであいつさ、まだ小さい子供に喧嘩教えてんだよ?」


喧嘩教えてた……?


「でもさ……その日も喧嘩教えてたら、飲酒運転のトラックが突っ込んで来て……子供守ってあいつ……。最後までカッコつけてたよ……」


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