『さよなら』は言わないよ。

「あの、起きてください!そこ邪魔なんですが!」

「ん~。」

「それに、もう放課後なんですが。」

「うえっ、マジで!!」

「ふぇっ。あ、うん。」

急に飛び起きるから吃驚して、変な声が出ちゃった。

恥ずかしい。

「クスクス…ふえっ!って何だよ。おっと、そろそろ帰らなきゃな。」

「あの、……お名前は?」

何故、名前を聞いたのか自分でも分からなかった。

無意識に口から出たんだ。

「俺?俺は、永本彼方!」

「私は、高橋琴。」

「そっか。じゃぁな、気を付けて帰れよ。」

「うん、分かった。」

これが彼方と最初に会った日。

それから、図書室は私と彼方の待ち合わせ場所になり、行く度に仲良くなった。

「彼方。」

「よう、琴。」

今日も放課後、一緒に本を読んだり話をしたりするはずだった。

「……あ、あのさぁ。」

「ん?どうしたの?」

顔を真っ赤にして俯いて、話をし出した彼方。
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