『さよなら』は言わないよ。
「う……嘘……だろ。……嘘だって言ってくれよ。なぁ、琴!」
嘘だよ。
でも、言えないの。
ごめんね、彼方。
「嘘じゃないよ本当の事。最初から遊びで付き合っただけ。」
違う違う違う。
今も好きなの。
遊びなんかじゃない。
でも、こうでも言わなきゃ彼方は認めない。
本当にごめん、彼方。
「……最低だな。」
彼方は低い声で言った。
聞いたことの無い低く冷たく鋭い声で。
私は振り向いた。
そこには、冷たくて鋭い目で私を睨んでいた彼方の姿があった。
吃驚したけど、私は後を向いて歩き出した。
「バイバイ。大好きだったよ。」
そう言い残して来た道を歩いた。
いく場所は病院。
私は、悲しかった。
一番、愛しい人に嘘でも言いたくない言葉を言ってしまったから。