『さよなら』は言わないよ。

痛かった。

病気じゃなくて、心が痛かった。

女の子と彼方は腕を組んで学校に向かっていた。

私も、後から気付かれないように付いていった。

彼方は学校では、まぁまぁモテる。

女の子と話をしているだけでも、嫌だったのに腕を組んで居る所なんて見たくなかった。

病院に戻ろうとした時、ふと二人の話し声が聞こえた。

「彼方~。好きだよ~。」

猫なで声で女の子は言っていた。

「俺も。」

その声を聞いて胸が締め付けられる感覚がした。

「彼方~。チュー。」

彼方は無言でキスを女の子にしていた。

涙がポロリと出てきた。

私は、走った。

その場に入れなくて逃げた。

頭では

『これで良いんだ。これで、彼方は幸せになれる。』

そう思っているのに、涙が止まらない。
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