『さよなら』は言わないよ。

「じゃあ、私は仕事に戻るから。バイバイ。」

―パタン

「ハァ……ハァ……。」

―カチカチ

静かな部屋に私の息遣いと時計の針が進む音が響く。

「ハァ……ハァ……ゴホッ……ゴホッ……ハァ……ハァ……。」

苦しい。

けれど、あの日よりかは苦しくは無い。

辛い。

けれど、あの日よりかは辛くは無い。

悲しい。

あの日より遥かに悲しくなった。

胸に心に穴が空いたような失踪感が有ると思うと

悲しい。

痛いほど悲しい。

私が死んだら

誰か悲しむ人が居るんだろうか。

居ないのなら

早く死にたい。

お見舞いに来る人なんて居ない。

「ゴホッ……ゴホッ……ゴホッ……ハァ……ハァ……。」

あの日、別れを告げたあの日を思い出すと

凄く、凄く

悲しくて

切なくて

虚しくて

寂しくて

辛いの。
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