『さよなら』は言わないよ。
お見舞い人は愛しい人
病院生活して、二週間が経った。
後、もう二週間。
そう思い空を見た。
考える事は、やはり彼方や蜜柑の事。
あれから、髪が抜けて私はニット帽を
看護婦さんに買って貰い被っている。
こんな姿、彼方には一生見られたくないな。
そんな事を考えていると、
―コンコン
「…はい。」
看護婦さんかと思い返事をした声は、私でも分かるくらい弱々しかった。
一分しても入ってこないので不思議に思った。
看護婦さんでは、無いことが分かった。
じゃあ、誰?
見舞いに誰か来たの?
でも、誰にも言ってないし。
お母さん?
いや、お母さんはまだパリに居る。
じゃあ、誰?
私が考え込んでいると
―ガラガラ
扉が開いた。
頭が付いていかなかった。
息が詰まるかもしれないって、思った。
今、会いたくて
でも、会いたくなかった私の
愛しい人
がそこにいた。