『さよなら』は言わないよ。
私の頬には一筋の涙が流れた。
「こ……と……?」
名前を呼ばれて我にかえり、叫んだ。
「見ないで!」
いきなり叫んだから吃驚した顔をしている。
私は、目線を落として言った。
「私、酷いでしょ。
だから、見て欲しくなかった。
とくに
彼方には。」
「……琴。」
そう、ノックをした人は私が会いたくて仕方がなかった
彼方が居た。
私は、目を合わさずに言った。
「どうして、来たの?」
「え?」
「どうして来ちゃったの?来ないでよ。
彼方が来たら……
私、
甘えて
帰したくなくなるじゃん。」
重い沈黙が続いた。
「琴。」
沈黙を破ったのは
彼方だった。
病気の事や嘘を言った事を黙ってたのに意味無いじゃんか。