『さよなら』は言わないよ。

そんなこんなで、学校の話などをしていると彼方がトイレに行った。

「あっ。もう、こんな時間。帰らなきゃ。」

「もう、帰るの?」

「うん。」

「そっかぁ、バイバイ。」

「バイバイ。また、明日ね。」

そう言いドアに手をかけている時に、私は言った。

「ねぇ、蜜柑。退院したら、遊んだり買い物したりしようね。」

蜜柑は私が病気の事を良く知らない。

ましてや、死ぬことすら知らない。

だから、私は笑顔で言った。

心配を掛けないように。

「本当、楽しみ!約束ね、絶対よ!!」

「うん。」

「じゃあ、バイバイ。」

「バイバイ。」

これが蜜柑に言った最後の言葉だった。

―パタン

一人になった病室は気味が悪いほどに、静かになった。
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