『さよなら』は言わないよ。
「退院したら、か。」
静かな病室に私の声がこだまする。
そっと、ノートを出した。
彼方が来ない内に書き、そっと戻した。
―ガラガラ
「あれ?あの五月蝿いバカ蜜柑は?」
彼方が帰ってきて静かな病室を見て言った。
「帰ったよ。」
「そっか。だから、静かなのか。」
……それを蜜柑が聞いたら、怒るだろうな。
何て、考えてると彼方が抱き締めてきた。
「彼方?」
彼方を呼んでも返事をしてくれない。
「か……。」
もう一度、呼んでみようとしたけど私は気づいたんだ。
彼方の背中が肩が震えていることに。
この時、彼方も不安なんだと思った。
私だけじゃなく彼方も、死を目の前にしてどうしたら良いか不安なんだ。
だから、私は笑顔で言った。
「彼方?私もね、死ぬことは怖いよ。不安だよ。だけど、私は帰ってくるから。」
少しだけ彼方が離して顔を見つめた。
「私は、絶対に彼方の元に帰るから。それまで、バイバイだよ。」
笑っているのに涙が出てくる。