『さよなら』は言わないよ。

それを引っ張ると、スルリと取れた。

それはピンクの可愛いいノートと、薄く小さい録音テープだった。

でも、ノートは三枚だけしかなくペラペラだった。

俺は、録音テープを机に置きノートの表紙を見てみた。

「!!」

表紙には、

『彼方へ。』

と書かれてあった。

この字は、琴の字だった。

俺は、そのノートの裏表紙を見た。

裏表紙には

『蜜柑へ。』

そう書かれていた。

俺は、自分の名前が書いてある表紙を捲った。

そこには、ビッシリと字が書いてあった。

俺は、自分を落ち着かせて読み始めた。


読み終わった後、俺は泣いていた。

気づかない内に涙が出ていた。

涙は止まらない。

いや、

止められない。

「琴。俺、頑張るよ。だから、絶対に帰ってこいよ。」

涙を流しつつ、俺は笑った。

笑った後、俺は録音テープをポケットに入れ、ナースコールを押した。
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