流華の楔
今回の標的が長州藩士であることに、失念を抱いていないわけではない。
計画も、何もかも。
同胞としても、理解しがたい。
「(あの二人が関わっていなきゃいいんだけど…)」
近藤たちが御用改めする中、ふと次の店に目をやると――…
「あれは…」
軒下に釣り下げられている荷物のようなものに、見覚えがあった。あの時、兄が持っていたものではないかと駆け寄る。
「…間違いない」
この模様。
間違いなく兄の荷物だ。
しかも、物の陰に武器が多数置かれている。
「これは…!」
「どうした新崎!? 何か手がかりでも見つけたか?」
「………」
永倉の声にも反応できないほど、和早に焦りが生じていた。
「新崎?」
「あ…いいえ」
その店の名は『池田屋』。
店に入っていく近藤を横目に、和早は立ち尽くした。