流華の楔
二階に上がり、奥の座敷へと急ぐ。
勢い良く襖を開ければ、数人の志士の中に兄の姿があった。
「兄上!」
「え…和早!? どうして新選組の羽織りなんか…」
驚く兄の前に、志士が踊り出る。
「新崎様、お逃げ下さい。こやつは私が!」
「あ、ちょっと…!」
抵抗虚しく兄は後方に押し出される。
「うわ!」
あの兄が二階から逃げられるのかは不明だが、こちらも殺すつもりはないので好都合だ。
「今度は仕留めさせてもらう!」
「今度はって…、貴様あの時の刺客か!?」
「尋常に勝負…! でやあああああ!!」
ザシュ――…
「…背後から殺ろうとする奴が、尋常も何もないんだよ」