流華の楔
「ふう…」
一人になると思い出す。
池田屋襲撃から二日経ったというのに、未だ兄の事を考えてしまう。
「……兄上…」
剣の腕はそこそこで大した度胸もないけれど、頭だけはずば抜けて良かったと思う。
大規模な革命を起こすくらいの算段なら、ものの四半時で作り上げるだろう。
「我が兄ながら、恐ろしい才能……ん?」
ダダダダッ、と物凄い足音が近づいてきているような。
「新崎っ!」
「永倉さん? あ、原田さんも…どうしたんですか?」
血相を変えて飛び込んできた二人に尋ねる。
「そ、」
「……そ?」
「そ、そ、」
「あーもうコイツは!」
そ、そ、そ、を繰り返す永倉を原田が張り倒す。
「いだッ! この野──」
「総司の体調が戻らねぇんだ」
つかみ掛かる永倉を総無視し、原田が和早の隣に腰をおろす。
「体調、ですか?」
「あいつ、池田屋ん時ぶっ倒れて離脱したんだよ」
「…怪我じゃなかったんですか」
怪我で戦線を離脱する例はよくあるが、病気となると…。
「んでよ、これが問題なんだが…」
「そそ。これが問題」
起き上がった永倉も口を出す。
これ、と言って懐から取り出された物は、小さな袋。
「…これは?」