流華の楔




「石田散薬だ」


「石田散薬?」



聞いたことない名前だ。
どこの医者が作ったのだろう。



「知らねぇのか? 土方さんが持ってるやつなんだが。あ、一応家伝みたいだぞ」


「土方さんの……それ、効くんですか?」



聞いたことがない上に、土方が持っているもの。


怪しい。




「さあ? 左之、効くかこれ?」


「いや。謎だな」


「…謎」



効果はともかく、“病は気から”という言葉もあるくらいだし気休めにはなるかもしれない。




「…で、それを新崎に見極めてもらおうと思って来たわけだ」


「はあ」



見極めろと言われても。
その薬が沖田の病状に効くのか否か、ということだろうか。






「…まあとにかく、沖田さんの部屋に行きましょう」


「おうよ!」
「…だな」







和早の専門分野は政や剣術のみに非ず、医療の知識も兼ね備えていた。


野性の勘とでもいうのか。

和早に頼んだ二人は、見事正解だったのである。





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