流華の楔
「あ、沖田さん。もう大丈夫なんですか?」
「………」
一番会いたくない人って、会うものですよね。
珍しく善人みたいな顔して、実は内心ほくそ笑んでいるんでしょう! …と沖田は毒づいてみる。
「心配したんですよ、微熱が続くから。朝食、今日は私が作ったんですが…よかったら食べてください」
「……はい」
干してある雑巾でも何でも引きちぎりたいような気分だったのに、素直に返事してる自分って一体。
「体調、戻ってよかったですね」
──また。
どうしてそんな嬉しそうな顔をするのだろう。
「………はい」
信じられないことに、自分は今、彼女の言葉が嬉しいと思っている。
ありえない。ありえなすぎる。
「………」
それもこれも全ては、熱のせいだったということにしておこうと思う。