流華の楔
夕刻。
「………」
巡察から戻った和早は、信じられないものを見た。
「これはいったい…」
それそのものは、れっきとした簪(かんざし)だ。
しかし、簪を使う者などここにはいない。
いたら逆に困るが。
「贈り物…と考えるのが正しいかな? となると、私が女だと知っている人物が…?」
和早はしばらく考えを巡らした。
「………」
よく見れば、かなり趣味が良い。
「てことは……普段から洒落込んでる土方さんか原田さん辺りかな」
和早はさっそく、その簪を片手に部屋を出た。