流華の楔
正座をして、大人しく“何か”を待つ。
「動かないでくださいよ」
沖田の気配が近づき
長い指が髪に触れ
しゅる、と髪紐が解かれる。
「………」
単調な息遣い。
髪を結われている感覚。
「…あの、」
「黙って」
それ以降は何も言わず、慣れた手つきで髪をまとめていく。
「はい、できましたよ」
そっと上に手を伸ばすと、巧に編み込まれた髪と、先程の簪に当たる。
巧い。
それも、こんな短時間で。
「もしかして、髪結いの名人とか言われてませんか?」
「さあ? 子供にしかやったことないので、それはないでしょうね」
と、悪戯っぽく笑う沖田。
子供にしかやったことないのに職人級とは、恐るべし。
「ですが…」
「何か不満でも?」
「この装いには合いませんね」
「………」
「くすっ」
結果的に、元に戻してしまったけれど
あなたにしてもらった分のお礼にはなったでしょう
「気が向いたら、また結ってあげますよ」
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