流華の楔




どのぐらいそうしていただろう。



ただ、俯いて。

死体の前で涙を流し。

小さな戦がようやく終わったのだと実感して。



「和早!」



名前を呼ぶのは誰。

駆け寄って、抱きしめてくれているのは、誰。



「…土方さん?」


「馬鹿ヤロ、どこ行ってたんだ、心配かけやがって…!」


しんぱい?

嗚呼、心配、か。



「お前、顔に傷を…!」



自分は、心配されていたのか。
たった一筋の傷に、そんなふうに焦って。


こんなの、ひとごとなのに。



「立てるか?」



自分が兄の行方を心配し、捜すように


この人も、自分を捜してくれる






「……すみません…、無理、みたいです…」




ふ、と身体が傾き、






闇に、堕ちた――



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