流華の楔




目を、背けたい。






「和早を渡せ、土方」


「な、にを…」



和早は、容保の駒。

容保の為に働き、容保の為に新選組にいる。



「………」


そして新選組も、容保の捨て駒。


命令は、絶対。




「…どうぞ」


「すまない」


壊れ物を扱うように、ゆっくりと彼女の身体を容保に渡す。


最後の感触は、さらりと触れただけの指。


容保が抱き上げた瞬間に覗いた首筋が土方の心を引き付けた。



近かった距離が、遠退いてゆく。





「このまま新選組にいれば、和早の精神は崩れる。新選組という立場で戦いに臨めば臨む程にな」


「それは、どういう…」



自分の知らない何か。

容保の駒だったという事実以外の何かが、和早の中にある。


それが知りたい。



< 137 / 439 >

この作品をシェア

pagetop