流華の楔
目を、背けたい。
「和早を渡せ、土方」
「な、にを…」
和早は、容保の駒。
容保の為に働き、容保の為に新選組にいる。
「………」
そして新選組も、容保の捨て駒。
命令は、絶対。
「…どうぞ」
「すまない」
壊れ物を扱うように、ゆっくりと彼女の身体を容保に渡す。
最後の感触は、さらりと触れただけの指。
容保が抱き上げた瞬間に覗いた首筋が土方の心を引き付けた。
近かった距離が、遠退いてゆく。
「このまま新選組にいれば、和早の精神は崩れる。新選組という立場で戦いに臨めば臨む程にな」
「それは、どういう…」
自分の知らない何か。
容保の駒だったという事実以外の何かが、和早の中にある。
それが知りたい。