流華の楔
「試していたんですか、俺を」
だとしたらタチの悪い冗談だ。
行き当たりばったりで告白まがいなことを言わせられ。
不甲斐なさ抜群の姿を晒し。
「はあ…」
これで落ち込まない方がどうかしている。
そんな土方の様子を見るに見かねた和早は、彼の傍に膝をつく。
「すみません、土方さん。倒れたのは真実なんですけど、起きた時なかなか言い出せず…」
「謝るな、和早。おかげで土方の本心が見えたではないか!」
容保があははは、と笑う。
さきほどの威圧感はどこへ行ったのだ、いったい。
「偶然に偶然が重なり、さらに容保様の遊び心が加わった結果です。申し訳ございません…」
悪気まったく無しの容保に対し、ますます申し訳なさそうな和早。
「いや、いいさ」
諦めるようにそう言い、乱れた浅葱色の羽織りを整える。
「土方」
こちらへ、と容保が土方に合図を送る。
「何でしょう?」
訝しげに尋ねれば、
容保の顔が真面目さを帯び。
「和早を頼んだ」
小さな声で紡がれたその言葉も、土方の耳には鮮明に届く。
「御意」
二人の表情は
酷く晴れやかで、
「…何を言ったんだか」
和早の頬も自然と緩むのだった。