流華の楔




「あ…いた。新崎君!」



六番組組長、井上源三郎が和早を呼んだ。

井上も試衛館時代の仲間で、温和ないい人という印象がある。

勿論、和早の性別も知っている。




「…はい、何でしょう?」


「お客様だよ」


珍しいよね、と困ったように笑った。
長州の人間かもしれないという懸念も相俟ってか、井上は屋内だというのに刀を携えていた。



「…はあ、お客様ですか」


「うん。町の人みたいだけど、一応気をつけてね」



「…はい」



京の人ではない、訪問者。
容保の使者だろうか。




「では…行ってみます」



「待て」


土方が和早を呼び止める。
何事かと彼を見れば、土方も立ち上がった。




「俺も行く」





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