流華の楔
正直、こんな展開になるとは思っていなかった。
「連れ戻せ」と命じられた時のために、極力遠くに行けるよう夜中に発たせたのだが。
まさか、擁護されるとは。
「…いいのか、近藤さん?」
未だ仏頂面で睨んでいる近藤に、躊躇いながらもそう聞いてみた。
「…構わん。彼女は“天に召されたのだ”とでも言っておけば、しばらくは安泰だろう」
「………」
「…………」
「……そうか?」
逆に永倉藤堂原田あたりの士気がガタ落ちるような気がするが。
土方は「どうしたものか」と首を捻る。
「……やっぱ、病気でいいんじゃねえかな」
「………」
「…………」
「…うむ……そうだな」
「よし決まりだ!」
土方は内心、「よかった」と安堵した。
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