流華の楔
父の訃報を聞いたその日に京を発ち、早馬を走らせた和早は、三日程で長州に着いた。
二人の前には、五層の天守閣を持つ萩城がそびえる。
慶長九年(1604)、毛利氏が指月山麓に萩城を築いて以来、萩の城下町は長州藩の中心地として栄えていた。
「懐かしいな…」
眩しい日差しを手で遮りながら、天守閣を見上げた。
幕吏である自分がここに住んでいた時もあったとは、なかなか酔狂な人生である。
「新崎様、さっそくですが…」
遠慮がちな佐上の声に、和早は「ああ」と微笑む。
「父が亡くなり、兄が不在の今…藩政は私が執らねばな」
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