流華の楔
顔が強張るのを感じた。
のしかかる不安を払拭すべく、和早は無理に笑顔を作る。
「…兄上、今宵は早く休まれた方が良いのでは。お疲れでしょう?」
そう言えば、有真は「そうだね」と頭をかいた。
「実は君に聞きたいことがあったんだけど……明日ゆっくり話そうか」
どくり、と心臓が音をたてる。
静かな室内。
下手をすれば兄に聞かれたのではないか、と和早は思った。
「どうしたの、怖い顔して?」
「…え?」
己は笑っていたはずだ。
無駄だと判りながらも、不安に駆られた己の心欺く為。
「無理しないで…」
有真が和早に近寄り、両手でその頬を包んだ。
「あに、うえ…?」
思わず見つめれば、男は整った顔を哀しげに歪ませていた。
.