流華の楔
「あの日……池田屋で和早と会った日、正直私は驚いた」
有真は静かに語った。
明日話すとは言ったが、和早の表情をちらと見た瞬間、今話そうと決めた。
「なんで君が幕府の狗と同じ羽織りを着てるのか。どうして“身内”と闘おうとするのか…」
「……っ」
有真の言葉一つ一つが、ただ真っ直ぐに突き刺さる。
有真の瞳に拘束されそうで、和早は視線だけ逸らした。
「この数年間君がしてきた……いや、させられてきた事を調べさせて貰ったよ」
天然で、賑やかな有真はどこにもいない。
和早の目の前にいる男の眼は、一国を統べる者のそれ。
和早は黙って二の句を待った。
「君は、たかが幕府の為に、その綺麗な手を汚していた…」
家の名誉、
身勝手な親族の為
今や長州の敵となった
幕府と、新選組の為に――…
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