流華の楔
確かに苦しかった。
人形のように感情を殺し、捨て駒同然に扱われた日々。
家の為、幕府の為と、必要以上の命を奪ってきた数年間。
けれど今は…
「……兄上が思っているほど、辛くもありませんよ」
「…え?」
「“私”を必要としてくれる方々に会えましたので、それなりに幸せでした」
ふ、と笑みが零れる。
容保、そして新選組。
彼等が必要としてくれた日常の中では、和早は決して孤独ではなかった。
ただ。
偽りを仄めかす自分を受け入れてくれた土方には、悪いことをしたと思った。