流華の楔
有真が鋭い目で和早を見た。
「…戻るのか?」
新選組に。
敵方である、幕府に。
「………」
どう答えようか迷っていると。
す、と有真の手が離れていった。
「たとえ君が望んだとしても、あんなところに戻るなんて私が許さないよ」
無機質な声音。
は、と有真を見れば、彼は薄く笑んでいた。
これも、和早が傷付くのを防ぐ為だった。
これ以上幕府に荷担すれば、彼女は命を落とす。
有真はそれを知っていた。
「見たんだろう、あれを」
あれ。
すなわち、新型兵器の購入額を記した資料のことだろう。
慌てて隠したのも無駄だったらしい。
有真はどんなことでも見抜く。
「残念ながらただの天然ではないんですよね」と、和早は小さく溜息をついた。
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