流華の楔





「父上が死に、母上は病で別荘に篭っている」



「…そうですか」



「母上がいない今、幕府に付き従う理由なんかどこにもないだろう!?」



“悲痛”
そんな言葉が似合う兄の顔。



けれど。
確かにそうだ、と思った。



母の命令で会津に行き、母の命令で幕府に属した。




和早のすべては、母の命令によって動いていたのだ。





ならば。





「私は一応…自由、ということですか」



「うん。だから、今までのことは綺麗さっぱり忘れよう」



「…忘れる?」



「そうさ! 全部忘れて、これからは長州の為に尽くすんだ」



「………」







全部忘レテ、


長州ノ為ニ尽クスンダ







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